プライド(金子 達仁)
2018-01-01


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もーれつに期待して読んでしまったので、この本の評価は微妙です。
筆者自身が言っているように、取材すればするほど「いい話」がたくさん聞けてしまって、本の全体の構成が難しくなってしまった。
そこで、プライド1(第一回大会)に話を絞ったのですが、その割りは無駄と思える記述が多い。
広島カープの話や、サッカーW杯の話は要らなかったのではないでしょうか?
寺尾関の話も微妙だと思います。
ヒクソンのインタビューは大変興味深いのですが、家族関係の複雑さは紹介する必要が無かったのではないでしょうか?

しかしながら、高田がどうすれば自分に勝てたかという問いに対するヒクソンの答えは見事でした。
「訓練とは経験」というのはいい言葉です。
筆者にはここを深く書いて欲しかった。
つまりプロレスラーはふだん演技をしているから、経験を全然積んでいない訳です。
そんな高田がなぜヒクソンと闘いたかったのか?
この本ではさらりと理由が3つほど挙げられていますが、その取材はちょっと表面的だと思いました。
ここをもっと掘り下げて欲しい。
ヒクソンは命を懸け、高田はプライドを懸けたと筆者は言います。ではそのプライドとは何でしょうか?

結局、「ヒクソンと高田」を描くならば、榊原さんを描く必要はあまり無かったと思うし、榊原さんの物語にするならば、「ヒクソンと高田」はここまで書く必要はなかった。つまり、当初の構想通り、プライドの立ち上げから崩壊までを描いた方がよかったと思うのです。

ついでに言っておくと、ちょっと文章も凝りすぎて上滑りしている印象でした。もっとストレートに書けばいいのにと思ってしまいました。

一番良くなかったのは「あとがき」です。エピローグの余韻を全部消してしまったと言わざるを得ません。
もしかして、照れなのかな?
カッコ良く終わりすぎたから。
これだけ文章もうまく取材力もあるのに、ちょっと惜しい気がします。

僕はプロレス好きですから一気に読みましたが、みなさんはどうでしょうか?
[本を読んだ]

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